滅菌消毒装置と薬品と維持管理の役割 vol.7
今回は、前回からの続きで「次亜塩素酸ナトリウムの品質と特性を知る その2」と題して、記事を掲載していきます。
もう一つは製造時、原材料・製法にお金をかけない安価な次亜塩素酸ナトリウムでは未反応の苛性ソーダを少し残しpHを高くして分解を抑制する方法をとっているメーカーがあると聞いたことがある。製造現場は確認していないが製品から判断して、どうもそのような製品も流通しているような気がする。それは、次亜塩素酸ナトリウム注入装置に多用されているバイトンゴム製のOリングやダイヤフラム等が溶ける現象が見られることである。良質な次亜塩素酸ナトリウムでは全く溶けないバイトンゴムは実は苛性ソーダに対しては弱いのである。そのために注入装置の寿命を短くし、逆止弁などのききを悪くし、液漏れを起こしたり、安定した定量注入が難しくなることが考えられる。
次亜塩素酸ナトリウムの良い品質の製品を望むなら、特級の規格で、アルカリ度が低く、濃度低下の最も少ない薬品(不純物が少ないため自己分解が少ない、濃度が比較的長く安定→エアロックが少ない、装置の動作不良を起こしにくい)を選ぶことにより解決できるが、その分価格が何倍か高くなるので、大量の薬品を使うところでは維持費が高く使いきれない。その場合は使用する薬品の価格と使用量と維持管理の手間を計算し、薬品の欠点を装置・維持管理で補う事を考え、イニシアルコストとランニングコストの両方のバランスを考えなければならない。
設備を購入する人と、維持する消耗品を購入する人が異なる場合が多いので装置にマッチングする薬品を選ぶことは難しいが、使用量が多く価格の安い薬品しか使えない場合は、全自動希釈で大量注入方式の装置(価格は高い)を選ばなければならない。高性能で微量の薬品を原液注入できる装置(価格は安い)には、良質の次亜塩素酸ナトリウムしか実用上使えないことを理解しなければならない。
今後の掲載予定内容
・残留塩素濃度を均一にすること
・薬品の特性と装置
・安い薬品を使いこなすコツ
・維持管理の仕事を理解する
筆者:大学産業株式会社 前会長 曽布川 尚民